人は、何歳まで成長するのでしょうか?
人は、ある程度の年齢に達した後は、変わることはないのでしょうか?
皆さんは、どう思われますか?
発達心理学という学問があります。
その土台となる、いくつかの考え方があります。
その一つに、
「人が自分にとって最適な環境で発揮できる能力と、通常の環境で発揮できる能力には常にギャップがある」
というものがあります。
かつ、「そのギャップは、成人であるほど広い」、とも言われています。
つまり、「人は年齢を重ねても、成長余地がある」と考えられるのです。
これは、朗報!
なにせ、これからは「人生100年時代」ですから!
では、「オトナの成長」を促すためには、何が必要なのでしょうか?
まずは、「オトナの成長」を妨げかねない、意外によくある、間違った認識があります。
これらを押さえておきましょう。
一つは、
「最初に知識や技術など『できること』を身につけ、次に考える力など能力的成長がある」、というように、人の成長プロセスは一直線上に、積みあがるように並ぶ、という考えです。
これは、子供の成長には当てはまります。
ただし、ある程度の精神的に成長した、オトナの成長段階に入った後は適合しません。
もう一つは、組織にありがちな、「オトナには「教える」ことはない」という考えです。
ここで言う「オトナ」とは、社長や役員を含む部下を持つ管理職以上の人々を指します。
オトナ自身も、「教わ」ったり、知識を得る段階は完了したと思い、むしろ「教える」側に留まったり、新しい知識を得ることに意欲的でなくなったりする傾向があります。
実は、2つとも根本的には共通する、認識に基づいていると考えられます。
それは、オトナの成長に、知識や技術のインプットはいらない、または重要度が低い、という認識です。
実際には、知識や技術(スキル、考え方を含む)と思考力や認知力は、それぞれ互いに影響・補完し合う関係にあります。
これらの全てがそろって、共鳴し合う事で、オトナもずっと、知識を得ながら成長し続けるものなのです。
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クライアントのAさん。
リーダーとなって10年近くたつ、その組織ではベテランリーダーの一人です。
会社にとっても初めての、買収案件を任されることになりました。
さすがの彼も、不安を隠せない様子でした。
考えたり判断したりするための材料が必要だと考えました。
買収に関する本や情報をかき集め、「久々受験生みたいに勉強した」そうです。
かつ、専門家の支援も得ることにしました。
一方で、彼は役員メンバーの一人でもありました。
社長からのAさんへの期待は、一貫して、
「自部門のパフォーマンスや運営には全く問題はないし、むしろ満足。
ただし、役員としては視座が低い。会社、市場全体を見た視点でモノをいってほしい」
というものでした。
新しいことに挑戦し、自分のものにする力があることは、買収案件でも証明済みです。
では、「視座を上げてほしい」という事については、なぜ成長がみられないのか?
それは、学習不足によるものでした。
買収という、門外漢のことに関しては、「知らない」「わからない」と彼は認識し、貪欲に学びました。
一方で、「経営者視点」「リーダーシップ」については、「もう十分やってきた」「一通り知っている」と認識していました。
社長からも、何度も同じことを言われ、若干煙たく思うところもあったようです。
ところがある会合で、日経新聞にもたびたび登場する著名な経営者に会う機会がありました。
その方が、他のリーダーの方に、
「あなたはリーダーになって、一体何冊の本を読んだのか?」
「経営とは一体何か?」
と厳しく問うているとき、どうか自分に質問がきませんように、と冷や汗をかきながら願ったそうです。
彼は今、改めて経営について、積極的に再学習をしているところです。
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一度知ってしまった世界を、改めて学習しなおすという発想は、自分一人ではなかなか持てるものではありません。
人は、できることを再利用したくなるものですし、その方が効率が良いからです。
ただ、同じ知識の上をぐるぐると考えるだけでは、限界がきます。
子供が新しい知識や技術を、何度も嬉々として夢中で学ぶように、オトナも学習に対する意欲を持ち続けたいですね~
それは確実に100歳まで成長できる、行動パターンの習得なのですから!