2020.04.27

遠くなった近い仲間と、今何を話しますか?

テレワークが始まってしばらく経ちました。

ある企業のテレワークの感想アンケートの結果を、知人がシェアしてくれました。
回答者は当企業社員約100名です。

7割近くがポジティブ
意外に今までと変わらないとか、今までの無駄が分かって改善につながったなど。

3割くらいはネガティブ
ネガティブな意見の多くは、雑談ができないことや、部下の仕事の様子を直接見ることができないこと。
チームとして機能しにくくなるのでは、という不安の声が多数みられました。

特定の企業の結果なので、企業風土や業種が影響しているとは思います。
それにしても、7割近くがポジティブとは、逞しいですね。

皆さんはどのようにお感じですか?

日系企業の多くは、4月に新年度を迎えています。

新たな方針や目標を掲げて、一気に浸透させ新しい行動へ舵取りをしたい時期。

現場訪問や、組織のキーマンとのミーティング・・・
リーダーたちは、組織の新しい舵取りに現場を巻き込む様々な施策を予定していました。

しかし、このような状況下、計画していたことの多くが実施できていないといいます。

部下もまた、方針はオンラインやメールで発信されたものの、具体的なことはまだ見えていない、といいます。

働く形は変わり、ポジティブな意見も多い。
でも、全体的にスピードは落ちているように感じます。

変化の過程では、スピードやパフォーマンスが一時落ちる過程が必ずあります。
今の段階では、極度に悲観することではないと思います。

ただし、これらが予測の範囲なら。
リカバーする計画が、再構築されているのなら。

「コミュニケーション戦略」という言葉があります。
一般的には、企業が顧客などのステークホルダーに対して、製品やサービスの情報を効率的かつ効果的に伝える戦略を指します。

でも、リーダーには、顧客より前に自分の部下、自社の社員との「コミュニケーション戦略」を描いてほしいと、今、私は思っています。

リーマンショック以上の経済的ダメージという試算もでました。
各社ビジネス面での戦略の描きなおしを急いでいる事でしょう。

でもそれを動かすのは社員です。

物理的に遠くなった、一人一人の社員です。

17時ぴったりにオフラインになる人

気が付くと、この数週間一度も直接話していない人

事前に送っておいた資料を、読んでくれていない人

変化への対応も様々。
ばらばらに存在する社員。

どのように巻き込み、エネルギーを一つに結束するか。

会社にとっても、リーダーにとっても初めての環境です。
それに対応するための、新しい戦略が必要ではないでしょうか。

東北地方に多くの販売支店を持つ、メーカー企業がありました。
東日本大震災では、大きなダメージを受けました。
その中でも、いち早く立ち上がった支店には特徴がありました。

それは、支店長とメンバーが1対1でコミュニケーションを継続していたことでした。

会社ごとなくなってしまい、業務上話すことはない時期も続きました。
でも、定期的に1対1で話す機会を設け続けていたというのです。

そもそも業務が止まっている時に、何を話すの?と思いますよね。

上司と話すより、家族との時間を大切にね、というべきでは、とも思います。

けれど、この企業の社長は、惨事後程なく指示を出しました。
支店長に部下と話す場をもち続けるように、と。

結果として、

・自分の不安を聞いてくれる相手がいた

・早い段階で復旧後、まず何からやるべきか整理できた

・状況が戻ったら、何をやりたいか考える機会になった

このようなことが、メンバーのレジリエンスを大きく引き上げたのでした。

社長がなぜそのように指示したのかまで、私は確認ができませんでした。

ですが、社長の指示は、
突然断ち切られてしまった支店長とメンバーの生活や人生や仕事の一連の流れを、
もう一度作り直す道筋を提供したのではないか、と私は想像しました。

嵐になり、がけ崩れが起きて川をせき止めてしまうと、川の水は行き場をなくし四方八方溢れだします。

その時、溢れた水を通す、新しい水路が用意されていれば、流れはコントロールすることができます。

1対1での支店長との話す場は、メンバーにとって新しい水路の役割をなしたのではないでしょうか。

惨事の後の現在そして未来に向けた流れを通すための。

1対1の会話を展開したほうがいい、という話しではありません。
「いつまで続くのだろう」と立ち止まっているのではなく、自ら流れを変える水路を構築しているか、ということです。

平時、当たり前に練られていた「コミュニケーション戦略」 ― 会議、1on1、パワーランチ ー などが絶たれても、
ゴール達成できる組織づくりの代替案を、今持っているかどうか、ということです。

自分は、散り散りになった社員の立場で想像しているだろうか?

社員は、物理的にバラバラでも所属意識をもち続けているだろうか?

いずれ新しい働き方へ移行する時には、これまで以上にエネルギーが結集できるだろうか?

そんな問いに答えられるような、新しい戦略を、今もっているかどうか、ということなのです。

リーダー自身が変化を迫られる状況です。
リーダーの皆さんにもストレスがかかっているはずです。

そのような時こそ、周囲には、無意識に期待をしてしまいがちではないでしょうか。

・会話がメールだけになっているけど、内容的に問題ないようだから大丈夫だろう

・このような事態なのだから、普段のように密にコミュニケーションがとれなくてもわかってくれるだろう

・このような方針は状況からみて当然だ。納得して部下にもちゃんと伝えてくれるだろう

言葉にしない期待を重ねた結果、何も浸透していない、何も進んでいない、という事態に愕然とすることがないようにしたいものです。

今の事態にあった、一番あなたに近い仲間とのコミュニケーション戦略を、ぜひ早急に練ることをお勧めします。

また近く、直接会って仕事ができるようになったとき、滞りなく新しい水路を、豊かに勢いよく、水が流れているように。