2020.03.09

ザ・タイムマシン

海外出張が多かったころ、国を超えるって面倒だなあ、とよく思っていました。

通貨、通信規格、言葉、そして時差。
国境を超える度、多くの手続き、手数料等の費用、不便さや煩雑さによるストレスやミスも発生します。

こんなの全部統一しちゃえばいいのに~
ビジネスはスムーズになるし、無駄なコストは減るし、ストレスもミスコミュニケーションもなくなるのに~~

そう、真剣に思っていました。

私のようにぼやいているだけではなく、
対策を講じてくれた企業や人のおかげで、2020年の今は、当時よりかなりスムーズになりましたよね。
特にインフラの品質向上や整備、ITツールの発展は、自宅にて国境を超えることを当たり前にしてくれています。

これから先は、更に便利になるでしょう。

言葉も、機械が完璧にサポートしてくれるでしょう。
通貨の統一はハードルが高いですが、所詮人間が決めたルールです。
やろうと思えば「絶対にできない」ことではありません。

ただし、時差だけは、人間の力ではどうにもできなさそうですよね。
時間だけは、タイムマシンに乗るように自在に行き来したり、人間がコントロールするなど、できなさそうですよね・・・

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3.11の復興真っ最中だったころ、日経新聞にこんな記事が載っていました。

3.11のような不測事態は、企業にも襲い掛かる。
そのような時、どう対応するべきか。
そんなテーマでした。

まず、目の前で次々起こってくる時代に対処するチームと、
そして、その事態が中長期的に引き起こすであろう課題やリスクに対応するチーム。
これらの2つのチームを、別々に作る。

目先の物事への対応と、中長期的な視点での対応を2つ同時に、但し別々に動かす。

その結果、即時対応が素早くできることと、その事態をその後の戦略に活かすことも可能になる、と。

イギリスの軍隊での組織論、リーダーシップ論を、企業に応用した考え方によるものでした。

だいぶ時間がたってから、この記事を思い出したことがありました。

それは、イノベーティブな商品・サービス開発に成功した組織を特集した記事を読んでいた時でした。

成功要因の一つとして、完全に独立したチームをつくる、ということがありました。
イノベーティブといえるような商品を開発するチームを設立する。
適した人材を引き抜き、「専任で」配置する。

経営陣がしっかりこの体制にコミットしたすることがポイントである、とありました。

組織は利益を上げ続けなければなりません。
日々の活動で成果を上げ続けることは非常に大事です。
ですが、同時に中長期的な視野で未来を描き、今、策を講じておく必要もあります。

両方の時間軸で成果を上げるためには、役割をしっかり切り離してしまう。
組織だからなしえる技です。

もちろん、運用がしっかりマネジメントされなくてはなりません。
商品開発チームを作るも、メンバーは全員現業と兼任という状態のままにしたり、
開発の進捗や都度起こる課題の一つひとつに、経営陣が口出しをしたり、
開発する商品と、中長期経営計画が紐づいていないなど方向性が描かれなかったり、

こんなことを起こさない限り、
異なる時間軸にコミットするチームがそれぞれ自律し機能すれば、組織は時間さえコントロールできる。

そんな効力感をも持たせてくれる、記事でした。

でも私は、我々は一人でも時間をコントロールできる、と思っているんです。
そのタイムマシンのような時空移動を実現してくれるのは、私たちの「意識」です。

例えば、上司に仕事のミスを厳しく追及され、とても傷ついたとします。
すると、何度もその場面を思い出してしまいます。
上司に言われた言葉が、耳元で「聞こえる」ような感覚さえします。
今、すぐそばで話しかけてくれている人の声も「聞こえなく」なることがあります。
このような時、この人は「過去」にいますよね。

例えば、リーダーが魅力的なビジョンを語っているとします。
組織の未来を、活き活きと、キラキラと。
自然に耳に入るよく通る声で、喜ぶお客様の様子が「見える」ようです。
今はただ、会議室に並べられたスチール椅子に座っていても、
その固い椅子の嫌な感じさえ忘れ、わくわくして身体がポカポカしたりします。
このような時、この場にいる皆さんは「未来」にいるのです。

コーチングで出会うリーダーの方の中にも、このタイムマシンの操作にたけている方がいらっしゃいます。

そういう方は、「もし~なら」という質問に意気揚々と乗っかってきて、自在に未来を描きます。

過去の失敗や成功体験を、リアルに振り返り、感じ、そこから学ぼうとします。

話しながら、ふと感じる、今の身体の感覚にも敏感で、「言葉にすると嫌な感じがする」など、気づきます。

そういう方は、今の組織を見ながら、未来を同時にみてわくわくしています。

組織や社員の、数カ月と今の違いをすぐに察知し、策を講じようとします。

過去にいても、未来にいても、話しかけるとさっと現在に戻ってきます。
目を見て話しを最後まで聞いてくれます。

時空を自在に飛び越えながら物事を察知し対応する器用さ。

変化の激しい、かつ前例が通じないこれからの時代、
組織としても、一人のリーダーとしても、強みになる能力の一つではないでしょうか。

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過去2週間の間、皆さんが最もよく考えたことはどのようなことですか?
3~5つ挙げてみてください。

・今日の天気
・身体の調子
・奥さん/だんなさんに頼まれたこと
・今日の予定、次の予定
・お客さまが言ったこと
などなど

それらは、時間軸のどのあたりに集中していますか?

過去、近い過去、遠い過去

現在

未来、近い未来、遠い未来

誰にでも偏りはあるものです。
全く考えていなかったエリアのことを、15分でも時間をとって考えてみると色んな発見があるかもしれません。

仕事×近い未来 が多いなら、
仕事×遠い未来 を考える時間を

身体のこと×遠い未来 が多いなら、
身体のこと×現在 を考える時間を

このちょっとした習慣が、あなたの意識のタイムマシン操縦術の訓練になるかもしれません~~