2020.03.02

あなたの一言の飛距離、ご存知ですか?

コロナウィルスのことを、初めて耳にしたのは確か1月初旬。
中国で、新型のウィルスによる患者がでた、というニュースでした。

それから約2か月で、この状態です。
このウィルスの勢いに、世界中が圧倒されてしまっています。

どうぞ皆様くれぐれも、ご自身とご家族の健康を最優先にお過ごしください。
加えて、皆様の生活やビジネスへの悪影響が最低限に留められますことを、心よりお祈り申し上げます。

コロナウィルスの伝染力と共に改めて脅威を感じるのは、負の情報の伝播の速さとインパクトです。

Informationという意味での「情報」はもとより、Informationに付随して伝わる「不安」「困惑」「怒り」
そういう負の感情も、瞬く間に広がっています。
冷静さを阻害し判断力を低下させ、トイレットペーパーの買い占めなどの間違った行動を誘発させられています。

感情の伝播力、特に負の感情は要注意ですね。

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「プレイヤーとしては素晴らしいが、部下への態度が高圧的すぎる」
エグゼクティブコーチングのご依頼を頂く際に多いテーマの一つです。

上から目線で指示したり、一方的に叱責したりするような、敬意を欠いた言動はよくない、
といわれれば、モラルとして誰しもが「そうだ」と思うはずです。

でも、その態度と彼らが短期的にあげる売上(成果)が天秤にかけられ、
モラル的な正当性の優先順位が下がっているように見えることがあります。

このような状況に対して、より冷静な判断を促してくれるような調査結果があります。

ジョージタウン大学ビジネススクールのChristine Porath氏
『「無作法(Incivility)」が人に与える影響』をテーマに研究をしている方です。

彼女とその協力者の研究によると、
職場でうけた敬意に欠ける対応や無神経な対応をうけた人たちの、

66%は以前より努力をしなくなり、

80%はその出来事を引きずって
時間を無駄に過ごし、

12%は会社を辞めた、

としています。

この調査に興味を示した米シスコ社はこのような行為の損失を独自に見積もりました。
そして、年間1200万ドル(約130億円)相当の損失を被っているとの結果を導き出しています。

感覚的なことは数値化しにくいものですが、こうして数字として示されると、危機感が芽生えます。(※)

ただし、私が怖いなと思ったのは、この後なのです・・・

先の研究には、続きがあります。

例えば、上司が部下に「お前、こんなこと新人でもわかるよ」と、馬鹿にするような口調で言ったとします。
するとその部下は、パフォーマンスが落ちるわけです。
そして更に、その言動は、やり取りを聞いていた周囲の人のパフォーマンスをも低下させるというのです。
判断力が低下し、周囲とのコミュニケーションを避けるようになり、協力し合わなくなるというのです。

敬意を欠く言動の負の影響は、周囲にも伝播するのです。
ウィルスの保菌者が、マスクもせず所かまわずクシャミしてしまうようなものです。

「高圧的リーダー」の多くは、ご自分が他者に使う言葉が“少し”きついという事、
ある状況に陥ると通常の関係ではやらないような“つい”きつい言動にでてしまうという事を、
実はわかっていらっしゃることが多いのです。

ただ、“少し”きつい言葉や、“つい”出てしまう態度の影響力の範囲については、あまりに「無自覚」であるように思います。

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私がコーチングを学んだ「師匠」に教わったことの一つに、「伝わったことが伝えたこと」、というスタンスがあります。
伝える側は、伝えたいことに対して全責任をもって相手に関わる覚悟が必要だ、ということです。

「何度も言った」

「私はそうはいってない」

「そんなつもりで言ったのではない」

という数々の言い訳は、相手とコミュニケーションをとるという目的において何も意味をなしません。

仮に、伝えたいことが伝っていない場合、「伝わったこと」が、自分が伝えたことなんだ、と捉える必要があります。
その上で、相手に伝わるような伝え方で伝えなおす必要があります。

部下と目標を立て、達成してほしいなら、
常にお互い同じ熱意で同じレベル感で目標が認識できているか、いつも意識してコミュニケーションをとり続ける必要がある。

上司に現場を理解してほしいなら、
「わかってない」と不平不満を言う代わりに、上司の目線、組織の目線で工夫をして伝わるように伝え続ける必要がある。

人に何かを伝えるというのは、そういう事だよ。
そう教わりました。

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「高圧的リーダー」がもう少しだけ、
自分が何を伝えているかという事に自覚を持つことができたら、組織の生産性も大きく変わることでしょう。

「高圧的リーダー」を反面教師として、
共に目標を目指している全員が幸福感と主体性をもって仕事に取り組む環境を創るために、どういう関わり方が必要でしょうか。

Christine Porath氏は「敬意を示すこと」としています。

「敬意を示す」という表現には、これまでの上司・部下の上下関係とは異なる関係性をイメージさせるように思います。
浮かぶイメージはパートナーシップという関係性です。
高圧的に上から関わるでもなく、逆に擁護したりおもねたりするでもなく、対等である関係性。

自分の能力も相手の能力もそれぞれ独自に持っていると認識すること。
相手の話をよく聞き、素晴らしいところを認め、自分の意見も率直に伝える。
パートナーとして、約束を守り、情報を積極的に共有し、相談し、協力する。
自分が伝えたいことを自覚し、どう伝わっているかを確認し、責任をもってコミュニケーションをとる。

幸いにも、負の感情と同様に、幸福感やご機嫌もまた、伝播力を持っています。
負の感情の伝播力に負けないくらいに、幸福感やご機嫌感を蔓延させたいものです。

私たち一人一人の態度や話題にすることが、周囲に伝播し社会に伝播していくことを期待して、言動を決めましょう。

ウィルスに対する政府の対応の不手際を指摘するよりも、ネットで根拠のないジャンクデータを追いかけるよりも、
最低限やるべきことをやったら、距離をとって大きな物事の流れを見据えたいものです。

この突発的な不測事態から何を学び、どう未来につなげていけるかを、語り合いたいものです。

※TEDより

「Why being respectful to your coworkers is good for business」
by Christine Porath
(日本語訳付)↓

今週も素敵な一週間を~🌸